🌄 走り終えたあとに残るもの
山を抜けたあとの静けさ。
木漏れ日、空、風の変化。
緊張がほどけていく身体。
あの時間は、走りの興奮とは違う“満たされ方”があった。
そして、あの日を境に、俺の中で何かが静かに動き始めた。
🚗 初めて助手席で走った冬の日
あの冬、初めてセブンの助手席に乗った。
あれはただの“同乗”じゃなかった。
胸の奥にしまっていた憧れが、現実の形を持って目の前に現れた瞬間だった。
☀️ 夏の日光、霧降、大笹牧場
夏には日光へ。
昔バイクで走った霧降や大笹牧場を、今度はセブンで走った。
視点が違う。
風の匂いも、路面の感触も、同じ道なのにまったく違う世界だった。
そして、初めて運転させてもらった。
そのときの感慨深さは、助手席とはまったく別物だった。
でも——
本当の“決定打”は、そのあとに来た。
🌊 房総半島ドライブ —— すべてが決まった日
「週末に房総半島に行くけど、一緒に行くか?」
雨の予報がないことを前日に確認し、暗いうちに家を出た。
友人の家に向かい、そこから高速でお目当ての峠へ。

峠を駆け上がると、雲海が広がっていた。
小休止して下り、次の峠へ。
途中、俺がハンドルを握っても大丈夫そうな区間で、友人が言った。
「代わるか?」
日光で初めて運転したときの感慨深さとは、少し違う感情だった。
この日は、自分のセブンを運転するイメージと現実が重なった日だった。
アクセルを開けるたびに響く排気音。
シフトダウンで上がる回転数。
ハンドルを切る方向に目を向けてアクセルを踏む。
ときおりブレーキで速度を落とし、またアクセルを開けて音と加速を楽しむ。
友人をドキドキさせないように、少し気を遣いながら。
🏁 そして、運命の寄り道
峠からの帰り道、友人が言った。
「ちょっと寄っていこう。お世話になってるショップがあるんだ。」
関東でセブンを調べる人なら誰でも知っているショップ。
店長の顔も、昔の雑誌で見た覚えがあった。
初めての訪問。
紹介してもらい、今のセブン事情を聞く。
リアルに触れられる、絶好の機会だった。
工場に出ていた一台に、見覚えがあった。
「これ、少し前に売れたやつですね?」
「そうだよ。でも戻ってきた。」
理由は、前オーナーが“アメリカのヘビの名前の古いオープンカー”を買いたくなったから。
冗談かと思った。
扱いにくいのか、不具合があったのか——
そんな想像も頭をよぎった。
でも、俺は知っていた。
このセブンが“特別な一台”であることを。

💻 深夜の儀式
このショップのホームページ。
売れた車には「sold」の文字がつく。
俺はその文字を見て、
ふんぎりの悪い自分にため息をつくのが習慣になっていた。
この車も、そうだった。
「良さそうなのが入ってるね!」
画像をダウンロードして、待ち受けにしたりした。
「でも売れちまったよ。」
ホッとする自分。
あきらめた自分。
悔しい自分。
その繰り返しだった。
⚡ そして、目の前に現れた
値段も実は知っている。
写真も何度も見た。
角度違いの写真を、寝る前に何度も眺めた。
その車が、突然、目の前にあった。
夢でも見ているように、あちこち覗いたり、触ったり。
ふらふらとセブンの周りを歩いたり、しゃがんだり。

友人は黙って見守っていた。
「どうする?」
俺は、その場で契約を申し出た。
🔧 不安と、越えるべき一線
このセブンは30年前の特別な仕様。
俺が思い描いていた“ゆったりツーリングモデル”とは違う性格。
もっと回して、もっとギヤを使って、回転数を合わせて走るタイプ。
足回りもそのためにセットされている。
扱えるのか?
正直、不安はあった。
でも——
それでも、欲しかった。
連れて帰りたかった。
🚗 契約前の儀式
「乗ってみる?」
短い時間だったが、試乗させてもらった。
ドキドキで、夢中でハンドルとシフトノブを動かした。
その瞬間、俺は一線を越えた。
店長は、こんな人間を何十年も見てきたのだろう。
俺もその一人になった。
🛣️ 帰り道
友人の横のシートに身を預けて帰る道は、
今までと明らかに違っていた。
ため息とも、うめき声ともつかない声が、何度も漏れた。
「ようこそこちら側へ。」友人はそう言った。
ああ、早く、あれを連れて帰りたい。
第4話では、初めてのドライブについて書きます。

