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【ガレージ小屋編】【第12話】間口の“違和感”に気づいた日

ガレージ小屋編 The Garage Shed Chapter

■ 型枠が外れ、安心したのも束の間

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基礎の型枠が外れ、
きれいに打設された立上りを見て、まずは安心した。

しかし、その直後だった。

車が出入りする部分の両脇を眺めていて、
ふと違和感があった。

「なんか、イメージより広いな……」

広いのは良いことのように思える。
これなら出入りも楽だろう。

だが、何気なく形状を確認した瞬間、
胸の奥がざわついた。

「図面と違う……」

間口が、図面よりも広い。
ということは——

柱が納まらない。

■ 自分の“監理不足”を痛感した

冷静に考えれば、
墨出しの段階でも、型枠工事の段階でも、
私は寸法を“目視”でしか確認していなかった。

ホールダウン金物の位置も確認していない。

工事監理者としては、完全にアウトだ。

これは、私の責任だった。

どう直してもらうべきか。
現状のままで成立する方法はあるのか。

丸一日、図面とにらめっこしながら悩んだ。

■ 恐る恐る、店長さんに連絡

意を決して、店長さんに電話した。

「例の部分ですが、図面と形が違うのは……」

店長さんは落ち着いた声で答えた。

「ああ、あれですね。現場でみんなで相談して、広げた納まりにしました。報告してませんでした。」

一瞬、言葉が出なかった。

「えっ……わかってたんですか?
私はてっきり、図面が読みにくくて職人さんが間違えたのだと思っていました。」

「いえいえ、職人さんたちと話して、納まりを変えたんです。」

「……そうですか。分かりました。」

電話を切ったあとも、しばらく図面を見続けた。
そして、もう一度電話をかけた。

「一度、打ち合わせをお願いします。」

■ この建物は“構造計算”をしている

実は、この小屋は構造計算をしている。

理由は明確だ。

  • 私は構造の専門家ではない
  • 工務店に部材寸法や金物仕様を説明できない
  • そもそも、この規模の建物で建築基準法を満たす構造が成立するのか判断できなかった

法的には、構造計算は不要だ。
10㎡未満の小屋だから。

しかし、
セブンを入れる建物を“なんとなく”で作るわけにはいかなかった。

だからこそ、
間口のズレは見過ごせない問題だった。

予定どおり作ってくれた基礎を、後から壊したくない

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型枠が外れ、きれいに仕上がった基礎を見て、
まず思ったのはこれだった。

「せっかく予定どおり、きれいに作ってくれたものを、
後で壊したり、穴をあけたりしたくない。」

これは、どんな現場でも同じだ。
職人さんが丁寧に作ってくれたものを、
後から“やり直し”にするのは本当に避けたい。

■ もともとの設計意図:門型フレームで引き抜きに耐える構造

当初の設計では、
車の出入り口の中央にある二本の柱の間に
構造用合板(茶色い部分)を張り、門型フレームとして引き抜きに耐える
という構造にしていた。

  • 構造用合板

この三つが一体となり、
地震時の引き抜き力に抵抗する。

構造計算も、この門型フレームが
耐力要素として成立する前提で組んである。

だからこそ、
間口が広がってしまうと、このフレームが成立しなくなる。

■ 「図面と違う」=構造が成立しない可能性

現場で間口が広がっていると気づいた瞬間、
私が固まった理由はこれだ。

  • 柱が予定の位置に立たない
  • → 合板が張れない
  • → 門型フレームが成立しない
  • → 構造計算の前提が崩れる

つまり、
“ただの寸法違い”ではなく、構造の根幹に関わる問題だった。

■ だからこそ、後から壊したくなかった

基礎は建物の“土台”だ。
ここを直すとなると、
職人さんの手間も、コストも、時間も大きくなる。

だからこそ、
できるだけ現状を活かしたい。
でも、構造的に成立しないなら直すしかない。

その狭間で、丸一日悩んだ。

■ 店長さんの説明で分かったこと

恐る恐る店長さんに連絡したところ、
意外な答えが返ってきた。

「あれは、現場で相談して広げた納まりにしました。
報告してませんでした。」

私はてっきり、
図面が読みにくくて職人さんが間違えたのだと思っていた。

しかし実際は、

  • 現場で相談
  • 車の出入りのしやすさを考慮
  • その場で納まりを変更

という流れだった。

■ そして、もう一度打ち合わせへ

電話を切ったあとも、
現場と構造図を見比べながら考え続けた。

「このままでも構造的に成立するのか?」
「補強方法を変えれば対応できるのか?」
「それとも、やはり直すべきなのか?」

悩んだ末、
もう一度店長さんに連絡した。

「一度、打ち合わせをお願いします。」

■ 現状:ホールダウンは“外側の柱”に付いている

現場の納まり変更により、
ホールダウン金物は中央ではなく、
外側の柱に取り付いている。

つまり、
中央の門型フレームにかかる力を、
外側の柱へ“流す”必要が出てきた。

これは構造的に不可能ではないが、
設計の前提が変わるため、慎重な検討が必要になる。

■ 店長さんへのメール(要旨)

今回の件では、大変ご面倒をおかけしております。
本当に申し訳ありません。

設計の方のご意見も参考にしたいですが、
判断に困ると思いますし、
責任は監理者である私にありますので、
あまり負担をかけないようにして下さい。

職人さんたちが一生懸命考えてくださったのに、
今回の件は私が監理していなかったのが原因ですので、
工事費は私が負担します。

そして、私の考えた補強案を以下のように整理して伝えた。

■ 私が考えた補強案

E1–F1 間の剛性確保(当初案)
中央の門型フレームで引き抜きに耐える設計。
そのため、E1・F1 にホールダウン金物を設置していた。

現状:ホールダウンは外側の隅柱へ移動
引き抜き力は隅柱に流れる構造になった。

隅柱間全体で剛性を確保する方向へ
中央フレームの力を外側へ流す構造に変更。
ただし、E1・F1 も“ゼロ”にはせず、半分程度は負担してもらう。

E1・F1 の柱・土台・基礎を“部分的に一体化”
基礎と柱・土台を補強して一体化させる。

補強方法(案)

  • 堅木(52.5×120×400)を基礎側面に設置
  • ケミカルアンカー M10(深さ100)を4箇所
  • エポキシ系接着剤併用

堅木・土台・柱をスチールプレートで連結

  • 各4箇所ビス止め
  • プレート厚・ビスピッチは今後検討

■ まずは方針と工事費を決める

補強工事(④⑤⑥)は後からでもできる。
まずは方針を決め、工事費をどうするか整理したい——
そうメールに書いた。

仕事であれば、技術的な根拠と是正工事の施工要領書を作成し、一緒に、経緯や原因、再発防止策を作って、お施主さんのところに説明に行くことになるが、今回は、私が施主・工事監理者・設計者なので、そんなことにはならない。(しかし、結構反省している。)

ことの顛末は、この後の工事の進捗に合わせて、説明します。

次回予告:【ガレージ小屋編】【第13話】刻みが始まり、建物が立ち上がる