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【セブン編】【第3話】「房総で決まった日」

セブン編 - The Seven Chapter


🌄 走り終えたあとに残るもの
山を抜けたあとの静けさ。
木漏れ日、空、風の変化。
緊張がほどけていく身体。
あの時間は、走りの興奮とは違う“満たされ方”があった。
そして、あの日を境に、俺の中で何かが静かに動き始めた。

🚗 初めて助手席で走った冬の日
あの冬、初めてセブンの助手席に乗った。
あれはただの“同乗”じゃなかった。
胸の奥にしまっていた憧れが、現実の形を持って目の前に現れた瞬間だった。

☀️ 夏の日光、霧降、大笹牧場

夏には日光へ。
昔バイクで走った霧降や大笹牧場を、今度はセブンで走った。

視点が違う。
風の匂いも、路面の感触も、同じ道なのにまったく違う世界だった。

そして、初めて運転させてもらった。
そのときの感慨深さは、助手席とはまったく別物だった。

でも——
本当の“決定打”は、そのあとに来た。

🌊 房総半島ドライブ —— すべてが決まった日

「週末に房総半島に行くけど、一緒に行くか?」

雨の予報がないことを前日に確認し、暗いうちに家を出た。
友人の家に向かい、そこから高速でお目当ての峠へ。

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峠を駆け上がると、雲海が広がっていた。
小休止して下り、次の峠へ。

途中、俺がハンドルを握っても大丈夫そうな区間で、友人が言った。

「代わるか?」

日光で初めて運転したときの感慨深さとは、少し違う感情だった。
この日は、自分のセブンを運転するイメージと現実が重なった日だった。

アクセルを開けるたびに響く排気音。
シフトダウンで上がる回転数。
ハンドルを切る方向に目を向けてアクセルを踏む。
ときおりブレーキで速度を落とし、またアクセルを開けて音と加速を楽しむ。

友人をドキドキさせないように、少し気を遣いながら。

🏁 そして、運命の寄り道

峠からの帰り道、友人が言った。

「ちょっと寄っていこう。お世話になってるショップがあるんだ。」

関東でセブンを調べる人なら誰でも知っているショップ。
店長の顔も、昔の雑誌で見た覚えがあった。

初めての訪問。
紹介してもらい、今のセブン事情を聞く。
リアルに触れられる、絶好の機会だった。

工場に出ていた一台に、見覚えがあった。

「これ、少し前に売れたやつですね?」
「そうだよ。でも戻ってきた。」

理由は、前オーナーが“アメリカのヘビの名前の古いオープンカー”を買いたくなったから。

冗談かと思った。
扱いにくいのか、不具合があったのか——
そんな想像も頭をよぎった。

でも、俺は知っていた。
このセブンが“特別な一台”であることを。

💻 深夜の儀式

このショップのホームページ。
売れた車には「sold」の文字がつく。

俺はその文字を見て、
ふんぎりの悪い自分にため息をつくのが習慣になっていた。

この車も、そうだった。

「良さそうなのが入ってるね!」

画像をダウンロードして、待ち受けにしたりした。

「でも売れちまったよ。」

ホッとする自分。
あきらめた自分。
悔しい自分。

その繰り返しだった。

⚡ そして、目の前に現れた

値段も実は知っている。
写真も何度も見た。
角度違いの写真を、寝る前に何度も眺めた。

その車が、突然、目の前にあった。

夢でも見ているように、あちこち覗いたり、触ったり。

ふらふらとセブンの周りを歩いたり、しゃがんだり。

友人は黙って見守っていた。

「どうする?」

俺は、その場で契約を申し出た。

🔧 不安と、越えるべき一線

このセブンは30年前の特別な仕様。
俺が思い描いていた“ゆったりツーリングモデル”とは違う性格。

もっと回して、もっとギヤを使って、回転数を合わせて走るタイプ。
足回りもそのためにセットされている。

扱えるのか?
正直、不安はあった。

でも——
それでも、欲しかった。
連れて帰りたかった。

🚗 契約前の儀式

「乗ってみる?」

短い時間だったが、試乗させてもらった。
ドキドキで、夢中でハンドルとシフトノブを動かした。

その瞬間、俺は一線を越えた。

店長は、こんな人間を何十年も見てきたのだろう。
俺もその一人になった。

🛣️ 帰り道

友人の横のシートに身を預けて帰る道は、
今までと明らかに違っていた。

ため息とも、うめき声ともつかない声が、何度も漏れた。

「ようこそこちら側へ。」友人はそう言った。

ああ、早く、あれを連れて帰りたい。

第4話では、初めてのドライブについて書きます。

予告編:【セブン編】【第4話】夢心地と現実のあいだで